目黒「九条の会」ネットワーク



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  「五本木九条の会」が、「九条の会」の9人の呼びかけ人のひとり、憲法研究者、東大名誉教授の奥平康弘さんを招いて、2007年6月7日に講演会を開催しました。「目黒『九条の会』ネットワーク」もこの催しを後援しました。そのようすを報告します。
                               目黒「九条の会」ネットワーク事務局 野村


「ぼくは水脈に掘り当たった」
「重なり合った合意をたいせつに」
   
       奥平康弘さんの講演を聞いて

  この講演会の主催者は、「五本木九条の会」と、「日韓・韓日平和の友だち」というグループです。後援者として、私たちのネットワークとともに、「日本聖公会東京教区正義と平和協議会」、「恵泉バプティスト教会社会部」、「平和を実現するキリスト者ネット」が名を連ねています。

  「五本木九条の会」は、五本木にある「日本聖公会聖パウロ教会」を中心に、毎月2回集会を開くなど、活発に活動している「日本聖公会東京教区」のキリスト教信徒有志の方々の「九条の会」です。

  「日韓・韓日平和の友だち」というグループは、この講演会を中心とする一連の行事「韓日・日韓平和の友だち文化フォーラム」のために韓国から来日した11人の方々と、この方々との交流を希望する日本の方々とによって、聖パウロ教会司祭の李民洙さんを責任者として構成されたもので、6月6日から10日までの5日間、毎日、平和と文化の交流行事を行いました。

  教会の礼拝堂いっぱいの参加者。200人ぐらいでしょうか。オープニングに二つの合唱団(「わ」の合唱団、南部合唱団)の合唱。韓国から参加した方々の紹介。そのあと、李さんが奥平さんを紹介し、奥平さんが登壇しました。

「改憲の主要なターゲットは九条」
「パックス・アメリカーナに奉仕する集団的自衛権がねらい」

  奥平さんは「日韓合同の市民のみなさんにお話しするのは、はじめての経験」と述べ、「これまで憲法の問題を日本の問題として考えてきた」が、「世界のなかの問題として考え、この憲法を守ることの積極的な意義を再確認する機会を与えられた」として、謝意を表しました。

  奥平さんは、お話の前半で、改憲をめざす動きの特徴を解明しました。

  奥平さんは、「アメリカの日本占領が終了した時期にあたる1950年代初期からの憲法改正論の特徴は、保守的、反動的、歴史逆行的な性格の強い全面改正論で、現憲法は占領軍が押しつけたものだから、これに代えて自主的な憲法を制定すべきだというものだった」と指摘し、その内容として「天皇制の復活強化、市民的自由や福祉の制限」などを重視していたことを話しました。そして、「その後、ある時期から、改正の主要なターゲットが『九条』にしぼられ、陸海空の軍隊を正式に立ち上げることに努力を集中し、高度成長に合わせて質量ともにすさまじい発展をした自衛隊に憲法上の位置づけを与えることに力点を置くようになっていく」という経過を語りました。「最近の状況では、できれば全面的改定の方向も追求しようという態度が強まり、昨年の自由民主党の『新憲法草案』にも、その態度が現れている」と指摘します。

  「あらためて憲法改正への衝動が復活し、勢いを盛り上げる契機になったのが、湾岸戦争と『9・11』」、「特徴的なのは、アメリカからのプレッシャーが露骨かつ強烈であったこと」と指摘、「アメリカが『日本は軍事的な手段で国際貢献の責任を果たせ』と迫る。そこで浮上するのが『集団的自衛権』という概念。軍事同盟を結ぶA・B両国のうち、A国がC国から攻撃されたとき、B国がこれを『自国が攻撃されたこととみなす』として、A国と一体になってC国と戦争をする……その関係が集団的自衛権のコンセプト」、「たとえば、中国が台湾に対して軍事行動をとったばあいを仮定し、アメリカがそれを自国の利益への攻撃とみなして軍事的に反撃するばあいを想定してみる。その際、日本が、その事態を『日本が攻撃されたのと同じ』とみなして、米軍とともに中国を攻撃し、中国との戦争に踏み込む。これが『集団的自衛権の行使』」と解説します。

  「『自衛隊は、もっぱら日本国土への急迫不正の外的侵入を防衛するために設けられた必要最小限のもの』、『だから、自衛隊は憲法九条に違反しない』と説明されてきた経緯があります。ところが、湾岸戦争、アフガニスタン侵攻、イラク戦争と、自衛隊の海外派遣の機会が増えてきました。これは、アメリカ主導の多国籍軍参加を意味するものです。」「これまでの政府の説明では、すまなくなってきました。さらに、アメリカの求める軍事行動を行うには、武力行使を禁じている九条をそのままにしておけません。」「要するに、いま問題の憲法改正論は『集団的自衛権』のためのものであり、『パックス・アメリカーナ』(アメリカのための『平和』)を維持する目的に奉仕するものです。」と強調しました。「日本の政治経済の支配層は、この『パックス・アメリカーナ』を自分たちにとって望ましいと判断しており、アメリカに従属することはさしあたり悪くないと考えています。それで、憲法改正に大賛成なのです。」と述べました。

  奥平さんは「憲法改正の主要ターゲットは、九条を葬り去り、集団的自衛権が大手を振って闊歩しうるような日本国につくりなおすことにある」と繰り返しつつ、「その構造変化は、軍事面だけではすまない」ということを指摘します。「自民党には『自主憲法制定』という念願があり、それに沿った改正作業への努力も続くでしょう。それが、日本の社会と文化の将来にどんな影響をもつか。それは韓国の方々も関心をもたざるをえない問題でしょう」と述べ、お話の前半を締めくくりました。

「『九条の会』は改憲勢力にとって侮りがたい反対勢力」
「改憲反対の政治運動は真価を問われる正念場に立っている」

  奥平さんは、お話の後半で、2004年6月、「九条の会」を発足させたときのエピソードをいくつか紹介しました。

  「その年の春、『呼びかけ人』のひとりになってほしいという話をぼくが受けたころ、楽屋裏で超党派的な折衝が行われていて、加藤周一さんなど文学系の人たち、および、調整役の事務局の人たちで<世界にかかわる緊急で重要な問題にふさわしい、多くの人に理解される、これまでにない独特の運動にしよう、『九条の会』という名前で行こう、9人の呼びかけ人で行こう>などの基本アイデアが出されていたらしい。憲法を研究する会ではなく、憲法九条を守るという、緊急で重要な、きわめて政治的な性格の会だから、交通整理役の憲法研究者はひとりでいいということになって、どういうわけか、ぼくに声がかかった。」

  「初会合の日に鶴見俊輔さん、小田実さんにはじめて会った。『ベ平連』の運動の衣鉢を継ぐ人たちだった。市民主義的、個人主義的、自由主義的で、政治的な性格の強い運動を自分のペースでさりげなく、継続的にやる人たちだった。」

  「一度も市民運動、政治運動に加わった経験のない人に働きかけよう、参加した人が『九条の会』のブランチを次々とつくっていくようにしようと話し合った。」

  「9人が50万円ずつ出しあって活動資金にしようという意見が出たとき、僕も『なるほど』と思ったし、だれも驚かなかった。事務局から、講演会参加費や講演・出版・ビデオやDVD等の収益でやれるという発言があり、実際ぼくたちは1円も拠出していない。」

  そして、次のことを強調しました。

  「草の根の『九条の会』は6000を超え、毎月200ぐらいの割合で増えている。『九条の会』は、改憲勢力にとって、侮りがたい反対勢力になっている。」

  「しかし、楽観はできない。いま、改憲反対の政治運動は真価を問われる正念場に立っている。」

  奥平さんは、お話の最後に、「九条の会」の運動に参加して強く感じたことを2点あげました。

  「日本の市民の心の深いところに平和主義的な感覚が沈潜していて、隠れた心情、意識しないムード・直感として根づいているらしい。ぼくは、いくつもの講演会に参加し、聴衆の熱心な対応を目にして、市民のなかに脈打っている水脈に当たったという実感をもった。運動の進め方によっては、国民多数が『反対』の意思を表示してくれる可能性は大いにある。その可能性に賭けたい。」

  「ぼくは『自衛隊は違憲であり、廃止すべきだ』という意見だが、『九条の会』に参加する人のなかには、『自衛隊は自国を守るものである限り違憲ではなく、存続すべきだ。ただし、九条を改正すると、自衛隊の海外派遣、海外で外国と戦争するのを許すことになる。それには反対だ。』という人もいる。『国連軍に協力することに限定すれば憲法改正に賛成だが、いま提案されている憲法改正は特定国と結びついた軍事行動を是認するものだから、私は反対だ』という人もいる。理由、論拠が違っても、『九条改正に反対』という1点で大同団結すれば、多数を占めることができる。そのことを『九条の会』の運動を通してはじめて実感した。『重なり合った合意』(『オーバーラッピング・コンセンサス』)をたいせつにしよう。」

質疑応答から

  韓国からの参加者から奥平さんに、つぎの質問が出されました。

@ 日本の市民運動は憲法の平和条項を守ることができるのか? どのようにして守るのか?

A アジアの国々の人々は、日本国憲法の平和条項が廃棄されたら、日本がふたたび侵略してくる可能性があると、恐怖をもっている。このことを日本の社会はどのように認識しているか?

B 日本国憲法の平和条項は、日本の未来志向的な発展の礎石になると思うが、どうか?

C 改憲をめざす勢力の動きは、自尊心のためになのか、利益の増大のためになのか?


  奥平さんの答えの要旨。

@  「勝つかどうかは、いま、わからない。これからの運動がどう広がり、どう強まるかにかかっている。相手方に同じ問いを出したら、相手方も同じ答えをいうだろう。相手方にとって、ハードルがふたつある。ひとつは、国会議員3分の2以上の賛成で発議すること。選挙で改憲勢力が両院で議席の3分の2を占め、意見の相違を調整してひとつの案をまとめ、議決することが、実は容易でないことを、かれらも承知している。もうひとつは、国民投票で有効投票の過半数を確保すること。これも容易でないことを、かれらも知っている。かれらも必死でこのふたつのハードルを越えようとするだろう。私たちも、それを食い止めるために、『九条の会』の運動を発展させることなど、力を尽くす。」

A  「アジアの人々は日本が侵略してくることに恐怖をもっている……という発言はショッキングだ。日本の国民の多くは『侵略をしよう、植民地支配をしよう』と思っていない。しかし、政治的経済的支配層のなかに、アジアでリーダーシップを発揮したいという思いがあることも事実だ。憲法九条の問題は、アジアと日本との関係に深くかかわっている。なお、九条の問題とは別のことだが、朝鮮半島の状態に重大な問題があり、これは内なる力で解決されるべきことだと思う。そして、日本は、この問題にも憲法九条の考え方で対処しなければならない。」

B  「憲法の条項の具体的な内容は、時代によって変わってきた。1946年、1947年には意識されていなかったことが、その後の社会の変化のなかで新しい意味をもって浮かび上がるということがあった。一国の問題として考えられてきたことが、国際的な問題であったとわかるということもあった。制定時におおまかな『しかけ』ができて、その後の社会の進展のなかで、その具体的な姿が現れてきたということだろう。九条をふくめ、社会の進展のなかで憲法の内容が発展していくということをあげて、第3問への答えとしたい。」

C  「『自尊心のために』というのは、『戦前の日本のような社会に戻したい』という『保守的、反動的、歴史逆行的』な考えに対応し、『利益の増大のために』というのは、『21世紀の世界、アジアで、大国にふさわしい指導的な役割を果たしたい』という考えに対応すると思う。日本の社会のなかに前者のような考えは、広く残っていて、軽視できない。しかし、この考えで憲法を変えようとする動きは、国民多数の支持を受けることはできないと思う。後者の考えは、現実に大きな力をもって、改憲をめざす動きの影響力を広げると思う。九条を守る運動は、その考えの誤りを打ち破る力をもたなければならない。」


  あと、いくつかの質疑応答がありましたが、その部分は割愛します。

  全員で「ふるさと」、「臨津江(イムジンガン)」を歌って、閉会になりました。




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